Symphony V
そっか、と唯が呟くと、レオンはそのままにぃっと笑いながら、顔を近づけてきた。

「唯は稜夜がお気に入りなんだ?」

意地悪そうに笑いながら、レオンは唯の目を見つめてくる。


だっダレですか!?


さっきまでのレオンとは、うってかわって別人のような雰囲気をかもしだしている。

思わず身をよじる唯に、レオンはクスクスと笑った。

「どうしたんだよ?唯」

レオンの声が、まるで麻薬のように唯を刺激した。名前を呼ばれただけなのに、たったそれだけなのに、唯の心臓は大きく音をたてた。

「り…稜夜先輩は、憧れの人だもん」

張り付く唇を、なんとかこじ開け、少し震えた声を絞り出した。

「…くっ…あっ…あはははは!」

突然笑いだし、その場に崩れ落ちるレオン。その姿を、唯は呆然と見つめた。

「いや、ごめんごめん。唯ってほんと、からかいがいがあるよな」

目にうっすらとたまった涙をふきながら、レオンが言う。唯は少しだけむっとした顔になる。

「ほんと、ごめん。唯が可愛くってつい」

可愛いなんて、滅多に言われない。いつもなら素直に喜んでいるだろうが、残念ながら、このタイミングで素直に喜べるほど、私はバカじゃない。

「あっそう。それはどうも」

トゲトゲしさを全面に押し出して答える唯に、少し苦笑いを浮かべながら、レオンが謝った。
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