Symphony V
私は今、かわいい黄色のビートルに乗っている。運転手はレオンだ。

「……運転、うまいね」

少し緊張した面持ちで、助手席に座っている唯は言った。

一度家に帰って、母親に顔を見せなくてはいけないと言うと、送っていくとレオンがきかず、そのまま押し込まれるように車に乗せられた。
想像していたよりレオンの運転は上手で、安全第一といった感じだったので、少しだけほっとしていた。

「あたりまえだろ?ちゃんと国際運転免許も持ってるぜ?」

ひどく心外そうな表情をするレオンに、唯は首をかしげた。

「国際運転免許ってなに?」

驚いた表情を浮かべるレオン。に、唯は少しあわてた。

「なに?なんか変なこと言った?」

その様子を、ちらりと横目で見て、レオンは笑った。

「いや、そういえば、唯は免許は持ってないのか?」

聞かれて唯は変な顔をした。

「当たり前でしょ?だってまだ15だよ?」

「は!?15!?」

「きゃぁ!」

レオンがいきなり急ブレーキを踏んだため、思わず体が前のめりになる。何とかシートベルトがフロントガラスとの衝突を防いでくれた。

「び、びっくりした…」

突然の出来事に、心臓がバクバクと大きく音を立てている。胸に手を当てて、大きく目を見開いていた。

「ちょっと!もー…びっくりするじゃん!」

目に少しだけ涙をためて、唯が文句を言うと、レオンがじーっと唯の方を見てきた。なんとなく恥ずかしくて、思わずたじろいでしまう。

「ほんとに15?」

聞かれて頷く。


そんなに私が15だとおかしい?


今まで、実年齢より上にも下にも見られたことはない。大体みんな、ぴったりくらいで年齢をあててくる。首をひねっていると、レオンは感心したように息を漏らした。

「いや、悪い。別に変とかそういうんじゃないんだ。俺とそんなに変わらない歳なんだとおもってたからさ。…まさか5歳も違うとは思わなかったんだよ」
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