Symphony V
道中いろいろありながらも、そうこうしているうちに、唯の家に着いた。車から降りると、ちょうど、玄関から母親が出てきた。

「あら、唯じゃない…そちらは?」

不思議そうにレオンの方を見る。レオンはにっこりと極上の笑顔を浮かべ、軽くお辞儀をした。

「はじめまして。稜夜の友人でレオンといいます。稜夜に急用ができてしまったんで、代わりに俺が」

レオンの笑顔にころっとやられる母を見て、昨日の自分を思い出した。


…親子だわ、やっぱり。


顔もそうだが、性格も似ているとよく言われていた。まあ、まさか反応まで似ているとは思わなかったが。

「ただいま」

苦笑いを浮かべながら、唯は玄関に向かう。

「おかえり。レオン君もごめんなさいね、うちの子が迷惑かけちゃって」

「いえ、こちらこそすみませんでした。娘さんを遅くまで連れ回してしまった上に、外泊までさせてしまって」

申し訳なさそうな顔で答えるレオンに、母は首を横にふった。

「いいのよ、そんなこと。娘だってもう子供じゃないんだから」

ね?と母に言われて、唯はははっと笑った。

「お母さん、今日はレオンと一緒に、美術館いってくる」

唯が言うと、母は目を丸くして驚いた。

「あんたが美術館?どういう心境の変化??」

言われて、レオンが少し笑う。

「ちょっとレオン、そこ、笑うとこじゃないから」

少しムッとした声で唯が言う。

「あ、もしかして…ルーヴル美術館から、数点絵画なんかを借りてきて開かれるって話題になってるあの美術展?」

思い出すように聞いてくる母に、唯は大きく頷いた。
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