Symphony V
「日本でルーヴルの秘蔵の作品が見れるってなったら、行ってみたいし、やっぱり」

そりゃもちろん。フランスに行って、生のルーヴルの作品を時間をかけてゆっくり見てみたいけれど。子供の私にはそんなことは無理な話で。

「だから、レオンと一緒に、今日は美術館に絵画鑑賞に行ってくる」

そう言うと、母親はにっこりと笑って頷いた。

「良いことね。うだうだ家でごろごろしてるよりよっぽど生産性があるわ」

母親の言葉に、唯は少しだけむっとした。

「田舎じゃ何にもないから、家でごろごろしちゃうんじゃん」

母親は苦笑いを浮かべながら、それもそうね、と呟いた。

「まぁいいや、とにかく、そんなわけで行ってくるから。レオン、こっち」

そう言って、家の中に入っていく。レオンもそれに続いた。

自分の部屋にレオンを連れて行き、冷えた麦茶を差し出す。外は真夏日のように暑かったが、自分の部屋は、窓を開けてやると意外と風が通って涼しい。

「家には寄るだけじゃなかったのか?」

レオンに言われて、唯はうーんと少し考えた後、両手をぱんっとあわせて懇願した。

「お願い!」

突然のことに、少し面食らうレオン。唯はチラッとレオンの方を見ると、言いづらそうに口を開いた。

「いや、昨日と同じ服だし、着替えたくって。で、できれば、お風呂も入ってないから入りたいなーなんて…」

言うとレオンはあぁ、と少し納得した風に頷いた。

「いいよ、風呂、入ってきたら?その間、俺はここで部屋の中を物色してるし」

言われて唯の顔が引きつる。

「だ、だめ!絶対だめ!そこに漫画があるから、それでも読んでて!いい!?」

言って、唯は慌てて部屋を出た。


早くお風呂入って支度しないと、レオンが何するかわかんない!
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