Symphony V
「…ここ、本当にうどん屋なのか?」

唯の案内で着いた先を見て、レオンは少し怪訝そうな表情をした。

「あはは、やっぱ初めてだとそんな感じになるよねー」

唯が楽しそうに笑うと、レオンはいやいや、と講義した。

「誰が見ても、うどん屋にはみえねーって。だって、ここ、普通の家だぞ?」

そう、目の前にあるのは普通の民家。特にうどん屋だとかなんだといった看板が立っているわけでもない。

「大丈夫だって。まま、だまされたと思って。ほら」

唯に背中を押されて、疑いのまなざしを唯に向けながら、しぶしぶ歩くレオン。

が、それもすぐに変わる。

目の前でうどんを作っているおじさんに、それを細く均等に切っていくおばさん。その職人技を前に、レオンは目を大きく見開いて感動していた。

「すごい!すごいぜ、唯!」

子供のようにはしゃぐレオンに、唯は少し苦笑いする。
正直、唯にとっては珍しくもなんともない光景で、時々、近所のおばちゃんたちが、家に集まってうどんを作ったりすることもある。


まぁ…じもってぃじゃなきゃ、びっくりするよね。


楽しそうに工程を眺めているレオンを、唯は少しの間微笑ましそうに眺めた。

「おばちゃん、うどんの小2つね」

唯が注文すると、あいよっと元気よく答えて、さっとうどんを湯がき、ひょいひょいっとうどんを器に入れて手渡してきた。
手渡されたうどんを持って、レオンが少し困った顔をする。

「おつゆはここで…」

唯は説明しながら、ねぎを刻んで入れたりして、うどんを完成させていく。
レオンは説明するたびに、おぉ!と感動しながら同じように真似をした。
お会計もびっくりするくらい安くて、レオンは最初から最後まで感動の嵐だ。

「すごいな、ここは」


器とお箸を持って、外に置いてあった材木に腰掛けて、2人は完成させたうどんを口にした。
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