Symphony V
唯はぼーっと、里香の姿をそのまま見送った。

「声、かけなくてよかったのか?」

レオンに言われて、あー…と唸った。
里香と一緒に居たのは、里香の部活仲間で、唯は少し苦手なタイプの人間だったため、声をかけるのをためらったのだった。

「いいよ、せっかく里香も友達ときてるんだし」

そういってレオンに言うと、そうか?と首をかしげた。

「これからどうしよっか」

唯が言ったそのとき、お腹がきゅるっと鳴いた。


………………


思わず顔が赤くなる。

「あぁ…もうこんな時間か。飯でも食べに行くか?」

軽く笑われながらレオンに言われて、唯は頷いた。気づけば時間は13時をまわったところ。少し遅いお昼ご飯といったところだ。

「何か食べたいものはあるか?」

聞かれて唯は悩む。が、結局、うどんでいいや、と、美術館から少し行った場所にある、地元ではおいしいと評判のうどん屋へと向かった。
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