Symphony V
「あんだけ恥を晒しときながら、よく…」

「せんぱぁい。その辺にしといたほうがいいんじゃないですかぁ?」

まゆがいいかけたところで、里香がにっこりと笑って言葉を遮った。


やばい。


里香のその表情に、唯は固まった。

不意に、里香がまゆの側に行き、ボソッと何かを呟いた。
瞬間、さっきまでの高圧的なまゆの姿はなく、真っ青な表情で挙動不審に周りをみるまゆがいた。

「じゃ、先輩、しつれーしまーす」

クスクスと笑いながら、行こう、と里香が唯の手をひっぱっていく。

「あ、里香。ありがと」

唯が少し不思議そうな顔をしながら言うと、里香は楽しそうに笑いながら答えた。

「別に?大したことしてないし」

そういう里香に、唯は不思議そうに首をかしげた。

「大したことじゃなきゃ、あの人があんなに簡単に引き下がるわけないじゃん」

唯の言葉に、里香は楽しそうに笑った。

「だって、あいつムカつくんだもん」

答えになってない、と、唯がため息まじりに言うと、里香はまぁいいじゃん、とだけ言って笑っていた。
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