Symphony V
カーテンが閉まっているせいもあり、部屋の中は暗くよく見えない。
唯はしゃがみこんでその物体を触った。

「きゃっ…」

ぬるっとした感触が唯を襲う。


気持ちわる…なにこれ。


触った物体は少し冷たかった。

「どうしました?」

唯の小さな悲鳴を聞いた警官が、部屋の外から声をかけてくる。

「いえ。なんか雨漏りでもしたのかな。床がびしょびしょで。すぐに電気つけます」

そういって、電気をつけようと、紐を探したそのときだった。

「おい!」

「え?」

警官が叫んだ。何事かと驚いて入り口の方を振り向く。
ちょうど、電気の紐が手にあたり、唯はガチっとそれを引っ張った。

部屋が明るく照らし出される。


一面、真っ赤な部屋が、蛍光灯の光に照らし出された。

「え…」

警官は入り口で絶句して立ち尽くしていた。状況が理解できずに、唯はきょろきょろとあたりを見回した。


お父さんとお母さんの部屋って…こんなじゃなかったよね。なに、このホラー映画みたいな壁。


白い壁に、まるでペンキをぶちまけたかのように、真っ赤な色が当たり一面を染め上げている。

< 79 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop