光るバイブレーション
睦美

告白

蝉雫の声変わりが季夏を告げ、透き通った風が、その黒髪を雲の向きに靡かせている。

風の途切れ目に、彼女の声が映える。


「ねぇっ、睦美。どこか悪いの? 最近、可笑しくない?」


「えっ・・・。う~ん。」


「睦美、ほんと、顔色わるいよ。きちんと来てないの?」


「それとも~。うふっ。」


「瞬と上手く行き過ぎて、ふふ~っ、今流行の出来ちゃったとか、、ぷっ。」


「返事が無いとこを見ると、ご馳走さんかな、やっぱ」


 比呂子はそう言うと言葉を促すように、悪戯っぽくはにかみながら、

睦美の後姿を見つめている。


「ちがう!!」


流れる雲に願いを届けるように、屋上のフェンスから半身を伸ばしていた睦美は、

くるりと体を回しながら比呂子に羨む様な目つきで言葉を投げつけてきた。


「違うの、私どうした良いのか分からなくて・・・。絶対に誰も信じてくれない。」


「ご、ごめんなさい。私からかう積りじゃなくて、睦美が心配だから。

 明るく言ったほうが良いかと。でも、怒らせちゃったみたいで、ほんと、ごめんね。」


「ううん、分かってる。そんなこと分かってるから、比呂子と今いるの。」


「ねっ、比呂子。だまって聞いてて、お願い。絶対に途中で、口を挟まないでね、

 言葉が途切れると怖くて話せなくなるから。約束よ。」


「分かった、聞くよ。きちんと聞くから。」


「うん、それと話を聞いていて怖くなっても、絶対途中で逃げないでね、絶対。

 最後まで聞かなきゃいけないの、約束して。」


「約束する。」


今にも思いつめていたものが、あふれ出んばかりに潤んだ睦美の瞳の

懇願する様な気魄と、幼馴染の親友を助けたい心を、

確かめるように絞りでた比呂子の言葉であった。 



それに答えるように、睦美も確かめような眼差しでゆっくりと、

言葉を紡ぎ出し始めた。


「確かに、瞬のことなの・・・・・」



つづく
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