ただ、声をあげよう。
ジジっとセミの最後の声が聞こえて、あとに静けさが満ちていった。



「戦争が終わって髪を届けによし子さん、お前のばあちゃんのとこに行った。これ届けに。ばあちゃんはなーんもかんも焼けてしまって、何もなか野原で、豊抱きしめて立っとった」

「じいちゃん、美和さんてあたしのおばちゃんだよね。美和さんはどうしたの?」


「美和はな、空襲で死んだと聞いとる。ばあちゃんの話はそんときはもう要領を得んかったし、それからずっと美和のことは話さんかった。
だけど、あとになってから周りの人から聞いた」


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