宝石色の幻想


メールは頻繁ではないが、度々していた。事務連絡だけだった手段が、車内で話しきれなかったことを送るようになり、遂には美乃とメールで悩みを聞いたり、会話するようになっていた。


しかし柏木には仕事があり、家庭があり、返信がない日の方が多い。それを電車内で謝ったが、いつの間にかそれまでも暗黙の了解となり、謝ることはなくなった。


そんな二人だったが、電車以外で会ったり、遊んだり、そういうことは一切しなかった。そんな話にすらならなかった。

美乃も柏木も立場はわきまえていて、道徳的に犯してはならないことには絶対に手を染めなかった。



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