宝石色の幻想


そうだね、とエスプレッソ特有の苦味に顔を歪め、柏木はどこから話を持ち出そうか考えあぐねていた。柏木にも、蒼空音にも、突然すぎる死だったから。


「柏木さん。美乃が今から来るなら、何を頼みますか?」

蒼空音のその発言に、柏木は更に頭を悩ませた。脈絡も何もない話。なのに蒼空音の視線は真っ直ぐ柏木に向いている。

ならば、答えなければならない。この答えに、蒼空音は何かを求めている。



「アイスカフェオレ。あとアップルパイもね。」






『蒼空音、ダージリン好きだよね。じゃあ私もいつも通りカフェオレで!あ、あとアップルパイも捨てがたいなぁっ』





美乃の大好物、リンゴ。毎年、美乃の誕生日にはアップルパイを焼いた。


< 49 / 58 >

この作品をシェア

pagetop