ピエロの恋遊び
昨日あたしに最低なことをした奴は、母に連れられて平然とした顔でリビングに入り込んできた。
あたしと目が合うと、にこっと嘘くさい笑顔で笑う。
「おはよ、雪菜」
「………」
無視だ、無視。
こんな奴無視してしまえ。
「こら雪菜!おはようって言われてるでしょ!」
……怒られた。
「はいはい、おはよーございますう」
「アンタ何なのその挨拶の仕方…ごめんね、龍斗くん」
「昔からの付き合いなんだから気にしないって。それより雪菜」
「?」
名前を呼ばれてほとんど反射的に振り返る。
すると既に篠原龍斗の手があたしの顔近くに迫ってきていて、その指が優しくあたしの口元に触れた。
「っ!!」
思わず赤面するあたしを置いて、その指はすぐにあたしの口元から去っていく。
そしてヒョイと見せられたその指には、米粒が1つ乗っかっていた。
あ……、
「ついてた。だっせえ奴」
……いらっ。