俺と葉月の四十九日
「安田は戻ってないぞ」


俺の言葉に、ブル田はようやく大人しくなった。
が、今度は床に座り落ち込み始めた…。

「…まだ海で遊んでいるのか」

んな訳ねぇだろ。

「俺もどこに行ったのかわかんねぇよ」


すねたのか、ブル田は泣きそうな顔で俺を見上げた。
途端、眉をひそめる。


ブル田の視線の先は、包帯を巻いた俺の首…。


「…首」
「ああ…」

昨夜、安田に絞められた跡。

あまりにくっきりと指跡があったから、隠す為に包帯を巻いた。
逆に目立つが、寝違えたとか言い訳はできる。


ブル田はゆっくりと立ち上がり、カウンターへ両手をついた。
背伸びをして上半身を乗り出してくる。

…近い!


「…不浄の気配」
ポツンと呟くブル田。

「分かるのか?」
「おかしな気配だな。悪…では無い様な気はするが」

まるで匂いを嗅ぐ様に、ブル田は接近してくる。

「ちょ…マジ近すぎ!」
思わず後ずさりをして逃げた!


こいつ、少しでいいから周りを気にしてほしい!
後ろで客がレジ待ちしてんだよ!


「ブル田、あと30分でバイト終わるから外に行ってろ」
「圭介!女だな?その気配は女だ!」
「黙って外で待て!頼む!!」
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