草食系鈍感彼氏の射止め方
たぶん、雫石さんも後で姉に聞いてアタシの名前知っているかもしれない。
そう思ったけれどでもアタシは知ってるか?
なんて聞けなかった。
やっぱり嫌だったから。
でも雫石さんがアタシの本当の名前を知ってるか、知ってないか、
そんなのどうだってかまわない。
何度か自分からちゃんと名前のこと言おうと思ったけれどやっぱりなにも言えなくて。
…いつも少しの罪悪感。
雫石さんはとても繊細な印象を受ける人だけれど。
でもとてもしっかりしたひと。
そのコンクールのときも自分達の順番が近くなってみんなが緊張していても余裕でやさしい笑顔を絶やさないでいた。
そして制服のネクタイを緩めながら
「いつものようにいこっかー!」
って言って周りを和ませていた。