mixed Emotion
「じゃあね」

いつものコンビニに私を降ろして、つかさ君はバイクのエンジンをふかしながら最後に言った一言。

「ゆりは髪、黒い方がかわいいよ」




何それ…。


じゃあすぐ戻すよ…。


真っ黒に戻すから、もう会わない方がいいなんて
言わないでよ……


喉まで出掛かった言葉を呑み込んで


つかさくんが去っていくのを確認して


私は両手を口に当てて声を殺して……



狂ったように泣いた。




家までいったん我慢しようと思ったのにな……。


溢れ出る涙をもう止めようがない。


恋を失うってこんなに苦しいんだ。


こんな想いしなきゃいけないんだ。

自分が世界で一番可哀想な人間に想えてくる。



今なら言える。



つかさ君を好きな理由。

笑顔に声に大きな手。

落ち着いた態度に隠れた優柔不断な優しさ。

私じゃなくて彼女を選んだ事も含めて。



全部大好き。



でもさようなら。大好きな大好きなつかさ君。

しばらくこのコンビニには行けそうもないよ。

だけどやっぱり、出会えてよかった。





川野ゆり15歳。


実らなかったけど




本気の恋だった。
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