チューリップ


「ユズちゃんだよね~」

と言って扉の一番近くに座っている、あたしの隣に誰かが座ってきた。


神野 柚(カンノユズ)はあたしの名前だ。

あたしは名前が呼ばれた誰かも分からない男の方へ少し頭を左に向けた。


「ユズちゃんなんか歌わないの~?」



ちょっと薄めの茶色の髪が印象的なこの男は、あたしが返答もしてないのにまた質問してきた。


あたしは、この男が盛り上げ役だと分かり目線を合わせ少し口角を上げ微笑んだ。



そして、

「見てる方が好きだから」

といって目線を外した。


男は、そうか~と言って名前が呼ばれた方へと行った。



名前を呼んだのはミキで、あたしに気を利かせて呼んだんだろう。


あたしは、心の中でミキにありがとうと言った。



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