アザレアの花束を


その男は“ついて来い”というような素振りで宙に舞った。


俺はまだハッキリと目覚めていない体を起こして叫んだ。



「待てよ! 俺、空飛べないんだけど」



その声を聞いて立ち止まった彼は振り向きもせず言い放った。


「お前にはできるはずじゃないか?」


「えっ?」


「吸血鬼なんだろう? お前は」



俺はそのとき思った。


コイツは俺を試しているんだ。

吸血鬼としてふさわしいか。

仲間にするか。



俺は自分の手をじっと見た。


できない……


ハズがない。



その瞬間に
もの凄い力が押し寄せてきた。


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