キミは許婚
でも哲太にドキッてしたことがないわけじゃない。
「あたし……ホントに?」
「近くにいすぎて気付かなかったっていうありがちなパターンだろ」
落ち着いた態度の奥に苛立ちを隠しながら、あたしから目を逸らした聖はゆっくりと流れる景色を見ていた。
いつの間にか自分の中に芽生えていた知らず知らずの恋心。
許婚である人からそれを言われるなんて。
その恋心を向けた相手が許婚じゃなくて、幼馴染だなんて。
そして幼馴染には恋人がいて……。
……この恋心が聖に向いていれば何も戸惑うことはないのに。