キミは許婚
電話は女将さんからの内線で、そろそろ料理を運んでもいいかという確認の電話だった。
「明、料理運ばせる。お前はあっちの席な」
「あ……うん」
「なんだ? 何か言いたげだな。俺の膝の上がいいか?」
「口が裂けてもそんなこと言いません! ただ……」
ただ……キス一つもなく、今日の主旨である食事に入るのが意外というか……。
断じて期待してたわけじゃないけど、覚悟はしていたから、これもまた拍子抜けかも。
「ただ?」
「ただ、電話をワンコールで取らなかったなって」
「俺はいいんだよ。5コール目でも、10コール目でも」
安全に食事できることに越したことはない。
あたしは素直に自分の席へ座った。