水《短》
光溢れる世界の中で、私は立ち尽くした。
足をさらっていこうとする、水。
真夏の太陽にさえ逆らうように刺すように冷えた、水。
それはただの、水だった。
だがしかし
様々な生命を奪い、吸収し、生み出している
紛れも無く、ただひとつの、いのちだった。
絡み付く冷たい腕に、掠われないよう、ぎゅっと両足に力を入れる。
まだ膨れていない腹に、泥で汚れた手を当てる。
あたたかい肌の、その向こうで
とくとくと、聞こえるはずのない、鼓動を感じた。
了
