水《短》
視線を上げればきらきらと、流れる水が輝いていた。
目を細めて、辺りを見やる。
きらめくそれは、ごろごろと転がる巨大な石を、自身の力でもって打ちつけ微動させていた。
しぶきをあげながら緩やかなカーブを描き、それでもただひとつの方向へと枯葉や青葉、虫を巻き込み、落ちていく。
ただ流れている、それだけだというのに、その姿は、まるでひとつの生き物のようだった。
流れに逆らう二本の足を踏ん張り、私はじっと、この強く優しい生き物を見つめた。
先のほうでは痩せた犬が、大きな舌を出してがぶがぶと川の水を飲み、水に負けずに構える巨大な石の上、名も知らぬ虫が留まっている。
水に流され足に当った赤い木の実は、さらに押し流されて、砕けた。
……そこは、いのちで溢れていた。
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