―ユージェニクス―
「俺らはそっちの邪魔はしないし、黒川一味に接触する気もない。…当然黒川邸から何か持ち帰ったりもしない」
「……」

堂々と言ってのけた男へ眼鏡の白衣の男が怪訝そうに視線をやる。


「…それは無理な相談です。貴方達を見張るくらいなら、同行はさせません」

「頭カタイなぁ」
日堀がぴしゃりと言い切ったので、男は残念そうに眉を下げて隣の男の肩を叩いた。

「聞いたか勅使川原!黒川の屋敷にはあんな危険物があるってーのに、お巡りさんは俺らにその調査させてくれねーんだとよぉぉ」
物凄く悲しそうな物言いだ。

「うむ、困ったな管原。あの危険物は我々研究員でないと判断しかねないと言うのに…」
もう一人、表情はまったく動かない事が余計にその発言を気にさせる。

「な?あー残念だぁぁ」
「そうだな、とても残念だ」

「む…」
二人のクサいやり取りに日掘は顔を難しくさせた。

それを見た白衣二人はもう一押しと思ったのだろう。
「あーんなのが知らずに押収されたらやばすぎるよなぁ〜」
「あぁ、日本の驚異かもしれない」
「いや、世界の驚異になりかねねぇかも!」

(どういう事だ?世界の驚異?研究所と関わるものなのか…?まっまさか細菌兵器とかそういうものか!?それではただの犯罪者を逮捕に向かう我々の装備では荷が重過ぎるぞ…どうする!!)
日掘は完全に呑まれた。


「そ、その危険物とは……どのような物なのです?」

「それ言ったら同行許可してくれる?」

男は掛かったとばかりにキラキラと素敵な表情をしながら最後の念押しを決めた。
…日堀が捜査官を見やると、彼らは難しくも仕方がないという顔をする。

「……いいでしょう」

…口八丁に巻かれた感が否めないが…日掘はこくりと承諾した。


「どうも。因みに今から話す事はまだ不確定な内容だから、他に口外しないで欲しい。まぁもしも…」

男は特に、マスコミを見る。

「もしも“口を滑らせた”としても意味無いって事を覚えていて貰いたい。研究所(こっち)のボス、隠蔽上手いから」

言って、管原は少し笑った。



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