―ユージェニクス―




「……」


管原の話が終わると、日堀と警察捜査官は信じられないという顔をしていた。

「…もう一度言うが、まだ確定じゃない。俺らが調べて把握するまではなんとも言えない」

「……それは」

念を押した管原に対し日堀は口を開いたが、明らかに戸惑っていた。

「それを我々に話すという事は……謀反じゃないですか?」

「謀反!?ははっそんな大層なモンじゃねぇよ!」

管原が快活に笑う。
隣の勅使川原は相変わらず無表情だったが、何も言わずに此処に居るのは彼も同意だからだろう。

「だが、いみじくも貴方は言ったじゃないですか。……彼は隠蔽が上手いと」

「今の話が事実でその証拠を掴んだら、俺らがなんとかするさ」


「………」


部屋にしばしの間。


マスコミらは彼らの話をこっそりICレコーダーに録音していたが、内容は把握出来ずにいた。

日堀も管原も決定的な部分を口に出さないまま、しかし分かる者には分かるであろう内容で上手く会話を終えたからだ。
……マスコミは裏が取れない話は放送しない。


「…日堀さん、そろそろ…」

「え?あ、あぁ…もう夕刻ですね。ではお願いします」
日堀は捜査官に開始の合図をする。
と、一人の捜査官が口を挟んだ。

「あの、しかし…向こうには手だれの人間も居ると言います。もし彼らが危機にあったとしても、我々は関知出来ないかもしれない」

「あぁ、その辺は気にしないで仕事してくれよ」
管原があっけらかんと答える。

「こいつが結構強いから。何かあったら俺は護って貰いまっす!」
「…おまえのおもりは御免だ」

…どう見てもこの長身の男の方が強そうだがと誰もが思った。
もう一人の白衣は日堀と同じ細身に眼鏡。どちらかと言えば研究机が似合いそうな男だが…

「さっ俺達の事は気にせずしゃきしゃき行こうぜ!」

そんな事を言われてもあんな話をされた後では色々と気になる。
だが…
男が言う通り、確定前の事実を突き詰める事は研究員の彼らしか出来ない。

日堀は状況を整理し、ひとつ息を吐いてその場全員を見渡した。


「それでは……黒川邸包囲、17時を以って突入を開始。宜しくお願いします」



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