―ユージェニクス―
関根…と、邦浦?
「……うそ」
なんとも間抜けな声が出た。
そこで紀一は通信機を切る。
「二人だけの侵入者なら、峯と高城に任せられるはずだけど」
ふっと、笑う。
「――…」
「茉梨亜?」
研究所に行ったって聞いてた……
だからもう。
光は来ない。
「ねぇそうでしょ…」
じゃあなんで来たの?
光は……光じゃない?
二人は……
「あ…わ……私」
「え?」
「私……殺されちゃう」
「……何故?」
「だって…」
だって。
「私はもう、あの茉梨亜じゃないから……」
呟いて、そして勝手に激昂していた。
「要らないの!!私はもう違うものだから!!溺れたんだもの!!!」
叫んで、いた。
「私はもうあの頃の茉梨亜じゃない!!!」
きっと
「恨んでるのよ私を!!されるままだった私……よごれた私を消しに来たんだわ!!」
息が切れる。
ごめんなさいごめんなさいでも、
殺されたくない。死にたくない。
「怖いよぉ……」
がくがくと血の気が引く。
指先を指先で抑える。
怖くて悲しくて、茉梨亜は泣いた。
「殺されるって?」
紀一はそっと茉梨亜の頬に触れ
「大丈夫だよ、茉梨亜」
優しく、その流れる雫を拭う。
「もしそうなら、茉梨亜が殺される前に俺が――」
侵入者を、と唇で紡いだ。
「殺してあげるから」