テディベアは裏切らない
「? 壮馬くん?」

こちらから声をかけると、彼は、とても苦しそうに、俯いた。

「俺は……お前の傷を、どうにかして癒してやりたいと思ってる」

「それは、わかりますよ?」

「けどな、力不足なのもわかってるんだ。お前が、それを望んでいないことも……」

私が彼に散々言ってきたことを口にされて、少し、呆気に取られてしまう。

「壮馬くん、言うことから察するに、私の傷を縫合しに来たとか、説得しに来たとか、そういう話じゃなさそうですね」

「ああ」と彼は、苦い表情のまま頷き、

「もう、諦めた。それがお前のためなんだろう。――ほら」

真っ白い、目も鼻もついていないテディベアを、放った。私へ。

受け取る。思った以上に、なめらかなさわり心地。シルエットは完成されているのに、目も鼻もないテディベアの雛形は妙に、滑稽で、さびしいものだ。なんの表情も見えない。それは、彼が私のことをわからなかった、なんの心情も汲み取ることができなかったという、敗北宣言なのだろう。

階段を上がったところでは、こちらへ下りようとしていた私の親友達がフリーズしている。

目の前では、私の旧友が、決して私のほうを見ないようにしながら、俯いている。
とても、優しい気分になった。

必死になって、どうしても敵わないものと戦った人を称えたくなった。

上の二人にも聞こえるように、大きな声で言おう。
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