テディベアは裏切らない
♪
小説はなかなか書き進まない。書き直しても書き直しても、この物語が彼女への贖罪になるのかどうか……それが頭のはしを掠めるたびに、消してしまう。労力は要らない。ただ、原稿の気に入らない部分をドラッグして、一括消去してしまうだけ。むなしさだけが、キーを押す音とともに私の中に蓄積される。かちかち。かちかち。ああ、カッターを出すのに似てる。
物語はずっと、進まない。まるで、中学のあの夏、死んでしまった彼女のように、あるいは、私にように。このままじゃきっとずっと、進まない。進めない。
進まなくても、いいはずはないのに、私の心のどこかが、この作品の完成を求めていない気がするのは、なぜだろう。
たぶん、この物語の中で彼女に謝罪しても、そして私がかりそめにも許されても、それがなんの意味も持たないこととだれより、作者の私がよく知っているからだろう。
部長にも、小説が進まないことを心配されている。文芸部の活動として、三題噺がある。私が書き下ろしたいくつかのそれを読んで、部長は私を評価してくれている。小説家になるという夢を、なんの疑いもなく応援してくれている。だからこそ、私の本題がまったく進んでいないことも、知っていた。
「牧田さん、大丈夫? 全然進んでないみたいだけど……〆切とか、間に合うの?」
「はい、大丈夫ですよ」
「でも、むしろ物語、戻ってない? 前書いてた分も消してあるみたいだしそれに」
「大丈夫ですよ、心配いらないです、ほんとに」
小説はなかなか書き進まない。書き直しても書き直しても、この物語が彼女への贖罪になるのかどうか……それが頭のはしを掠めるたびに、消してしまう。労力は要らない。ただ、原稿の気に入らない部分をドラッグして、一括消去してしまうだけ。むなしさだけが、キーを押す音とともに私の中に蓄積される。かちかち。かちかち。ああ、カッターを出すのに似てる。
物語はずっと、進まない。まるで、中学のあの夏、死んでしまった彼女のように、あるいは、私にように。このままじゃきっとずっと、進まない。進めない。
進まなくても、いいはずはないのに、私の心のどこかが、この作品の完成を求めていない気がするのは、なぜだろう。
たぶん、この物語の中で彼女に謝罪しても、そして私がかりそめにも許されても、それがなんの意味も持たないこととだれより、作者の私がよく知っているからだろう。
部長にも、小説が進まないことを心配されている。文芸部の活動として、三題噺がある。私が書き下ろしたいくつかのそれを読んで、部長は私を評価してくれている。小説家になるという夢を、なんの疑いもなく応援してくれている。だからこそ、私の本題がまったく進んでいないことも、知っていた。
「牧田さん、大丈夫? 全然進んでないみたいだけど……〆切とか、間に合うの?」
「はい、大丈夫ですよ」
「でも、むしろ物語、戻ってない? 前書いてた分も消してあるみたいだしそれに」
「大丈夫ですよ、心配いらないです、ほんとに」