恋し金魚
最終章 花火
それから私達は残りの時間を過ごした。



暑い夏の日々―…




水族館にも行った。



おばさんと一緒にご飯を作った。



幸くんのバイト先に連れて行ってもらった。


花火をもう一回やった。



みんなでスイカを食べた。



毎日が…幸せだった。

時間が流れるのは早くて…


思いを伝えるのはすごく緊張して…




時には自分は死ぬんだと、泣いた夜もあった。







幸くんは 困るかな?


どうせいなくなってしまうのに、この気持ちを伝えたら あなたは困るかな…?





幸くんは優しいから…


きっと笑顔でいてくれるんだ…




幸くん


好きよ。




世界一好き。




こんなに広い世界なのに、私はあなたに出会えて

恋をしました。





私は 恋をしました。






「花火、とうとう明日だな…」



アパートの階段に座りながら、幸くんはポツリと言った。




「うん。…明日。」




あなたと…最後の日。





「浴衣着るの?」



「ううん。このまま…このワンピース好きだし、最後もこれ着てたいから…」



「そっか……明日、迎えに行くな。」



「うん。」






私の肩に幸くんがもたれてきた。




「幸くん…?どしたの」










「ごめん… このままにさせて…」














そのときだけ、時間が止まったようだった。



青っぽい夜空が、ただ私達を包んでいた。






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