恋し金魚
朝、目覚めてみるとカーテンからこぼれてくる光がキラキラしていた。




「花火ちゃん、おはよう。」



「おはよう…おばさん。」




「花火ちゃん今日帰っちゃうのよね? アメリカに…」




おばさんには内緒にしていた。



悲しくなんてさせたくないから…





「また会えるわよね?」


「きっと…、会えますよ!」






ぎゅっと私の手をにぎってくれた。



「いつでも帰ってらっしゃい。ここは、あなたが暮らした家よ。」



おばさんの温かい手のぬくもり…



おばさんは涙を溜めながら笑ってくれた。



「ありがとう… おばさん」





ピンポーン……



「あら。幸ちゃんね…」




戸を開けると幸くんがいて、「おはよう」と言ってくれた。




「おはよう 幸くん」




「さっ、行ってらっしゃい。花火ちゃん」



「…おばさん…本当に今までありがとう。」


「私もよ、花火ちゃん。忘れないでね。」




「うん…おばさん 大好き」




そう言って別れを告げた。


おばさんは見えなくなるまで手をふってくれた。









「どこ行く?」



「一度行ってみたいとこがあったの!海!海が見たい!」




「海?いいよ!ちょっと遠いけど…行こ。」



私達は電車に乗った。



ゴトン ゴトンと電車が動いて景色が走った。






「花火、海見えてきたよ。」


「…すごい!広い!」




電車を降りてすぐに走って向かった。




砂浜を一気に走る。




「ほんとに広ーーいっ!!気持ちいいー!」



「ははっ!花火大会のときみたいにはしゃいでるし」





ザザァ…


ザァァ…アン



海の音……





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