空の姫と海の王子


口の中に広がる苦味と甘味は
全く変わらない懐かしい味


奈々は改めてホッとした
由紀も優もマスターも
三人共無事だったのだから

ただ、他の三人は?
無事なのだろうか?

嫌な予感が頭を過る

すぐにでも聞きたいが
何も知らないはずの奈々が
三人の名前を出したとしたら


絶対怪しいわ……
私だったら、絶対疑うもの


「……奈央と玲と蘭は今どこにいるんだっけ?」


どうやって三人の安否を確かめようか
奈々が考え込んでいる中
由紀がポツリと呟いた


「奈央は協会に行っていて、玲と蘭は屋敷で情報を集めているはずですが……由紀は知っていませんでしたか?」

「……度忘れ」

「は?」


優が思わず聞き返すと
由紀は真顔でそう答えた

優と奈々が呆然としていると
由紀はカップを置いて席を立った


「なんか疲れた。私は先に休ませてもらうね」


カウンター脇の階段をのぼっていく
由紀の後ろ姿を見つめていた奈々は
ハッとして口元を押さえた


由紀の能力は¨千里眼¨

全てを見透す心の眼


すっかり忘れてたわ……
どうしましょう



奈々は小さな溜め息をついた


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