顔のない恋
「あれ?傘…」

鞄の中をゴソゴソといじりながら、
入れたはずの折りたたみ傘を
探すも、見当たらない

終いにテーブルの上に鞄の中を
広げ始めた私に『どうしたの?』
と話しかけてきたのはカズキ

少し遅刻してきたけど、今日は
私と同じ時間帯のバイトだった


予想通り雨が降り出したので、
帰り支度を終え、持ってきたはずの
折りたたみ傘を出そうとしたら、
それが無い…

カズキにわけを話すと、自分の家まで
一緒に行き、それからまた車を借りて
送ると言ってくれた

「そこまでは悪いからいいよ
傘だけ借りれれば大丈夫だから」

「ダメ、俺が送りたいんだ
少しでも長く…
一緒にいたいから…」

最後の言葉を言い終わらないうちに
背を向けてしまったカズキの耳が
真っ赤で、つられて私も顔が熱くなり
それ以上何も言えなくなってしまった
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