学び人夏週間

「どうしたの?」

「ん? あー、うん」

手を握ったまま視線も合わせないし、それ以上何も言わない。

俊輔はチャラチャラしたタイプでいつもヘラヘラしているから、こういうしっとりした雰囲気が苦手だ。

加えて恋愛的な部分においては、照れが先行して自分の思っていることを口に出すのが得意なタイプではない。

だから私も無理に聞こうとはせず、ただ手をきゅっと握り返した。

しばらくして彼の重い口が開く。

「俺ら近くにいるのにさ、生徒の前では……彩子に触れないじゃん?」

「そうだね」

「なんか、耐えられなくて」

小さな声で紡がれた言葉に、胸がキュンと締め付けられる。

我が彼氏ながら、なかなか可愛いことを言ってくれるじゃないの。

私は俊輔の肩に頭を乗せた。

すると、俊輔は握っていた手を放し、肩を抱いてくれた。

体がフィットして、安心感に包まれる。

小谷先生のことがあって不安に感じていたけれど、その不安がこの一瞬でなくなった。

今日小谷先生と何があったのかは、聞かないことにしよう。

だって、俊輔は間違いなく、私の彼氏だもん。

私たちはしばらくこの場でイチャイチャして、手を繋いで屋内に戻った。

階段を上り、2階で俊輔と別れる間際、私から軽くキスをした。

「おやすみ俊輔」

「おやすみ」

照れた彼を見て、幸せな胸の疼きを感じる。

今夜はいい夢が見られそうだ。





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