月夜にヒトリゴト

浮気

結婚して初めて知ったのは、旦那が手をあげる人だったと言う事実だけではなかった。

「風俗は浮気とは言わないんだ」と平気で言ってのける人だったということ。
独身者と同じように飲みまわり、女子大生などを、普通に自分の車の助手席に乗せ、“テニスの試合”という名目で泊まり歩いた。
“大勢”であり“仲間”なのだというが、それが、家庭を持つものに通用するかどうかという、世間一般のラインがない人だった。

世の中にはそういう人も存在するんだと、さも当然のように、教え込まれ、非難する私が、浅ましいのだと批判されるという、おかしな関係だった。

なんども、“毛じらみ”をうつされ、大変な目に合った。
重ねるごとに、さすがの私も、このままではいけない。
いい加減、旦那のいない暮らしを考えてみよう。
何度も思い直しては、実家の状況、私の置かれてる立場を振り返り、諦めていた。

子ども達のために・・・
今は我慢するしかないんだと、自分に言い聞かせ、言葉を呑む月日が過ぎていった。

何もかも管理され、手を上げられ、私は、普通な人間じゃないんだと教え込まれ、目の前は真っ暗だった。

ある人に、「幸せを夢見て、望んでいいんだ」と、「ちゃんと、言いたい事を言わないとだめだ」と諭されるまで、ずっと“おかしい”とは感じつつも、私には、こういう生き方しかできないんだと、将来に対する諦めも混ざっていた。

気づいたときには、もう、30歳という年齢になっていた。
長い長い、人生のトンネルだった。
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