私の敵は『俺様』です。


せっかく一生懸命勉強して合格したこの高校をそれだけの理由で退学になるのはごめんだ。


『そしてとにかく――…葵はまるで神のように優しい心の持ち主なのじゃ!
さすがわしの孫!!あっぱれじゃ!!』


その後も長々と校長先生の話(孫自慢)は続き、再び夢の世界へ旅立とうとしていると、校長先生の次の言葉でまた瞼をこじ開けるはめになってしまった。


『次は葵の挨拶じゃ。
おぬしら、うたた寝なぞするではないぞ!』


うん、目が合った気がする。


もちろん校長と。


これは――


もしかして、もしかしなくても、ヤバイよね…?


若干冷や汗をかきながら校長先生の方向に向かって頭を下げれば、校長先生は舞台の上をゆっくり去って行った。


あ、危なかったぁ!!


ホッとして溜息を零すと、視界の端に誰かが舞台を上がってくるのが見えてあたしは顔えをあげる。


遠くからでもわかるのは、サラサラの黒髪と長身だということ。


長い脚で舞台の中央へ向かっていくその姿は――…


さっき校長先生が言っていたように、気品ある黒猫のようだった。


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