トワイライト
 人は往々にして自分が幸せで充たりた生き方をしている時は、かつてのどんな強い憎悪の気持ちでさえもいつしか自然と薄れてしまうものであるらしい。

 実際に瞳子に対して許しがたい憎悪を心の内に秘めながらも理子は、幼い子供を養うためにと勤め始めたラウンジで日向と出会い、秘書に抜擢されたその日から日々の暮らしの中に埋没していった。

 ちなみにその間、理子は日向の温厚で優しい気質に幾度となく助けられた。その結果今現在理子は日向の秘書としての地位を揺るぎないものとする事が出来たのである。

 そんな忙しさの中で理子の心の中では瞳子への深い憎悪が次第に遠い過去として封印されていった。

 だが理子のその封印を再び解いたのは他でもない20年余りの歳月を経て再会した瞳子だった。

 かつて散々苛められて苦しんだ苦い想いが再会した瞳子によって、一気に理子の脳裏を駆け巡りその時再び心の中に瞳子への憎悪の想いが甦った。

 それはあたかも揺りかごの中で気持ち良くすやすやと眠っていた子供を無理に起こすような感じだった……。
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