エージェント・レイ‐狂人の島‐
私の履いているロングブーツが、コツコツと足音を立てる。

それ以外は何も音のしない、静寂に包まれた路地。

時折遠くの方から、獣のような唸り声が聞こえた。

恐らくは暴徒達の声だろう。

10万ほどの人口のこの島の、一体何人が正常なままでいるのか。

正常だったとしても、生き残っているのか。

正常なまま生き残っているのが、私だけだったとしたら…。

よくない想像ばかりが頭の中を支配する。

それでも意志だけをしっかりと持って、私は歩を進めた。

生きている以上、何とか足掻き続けなければならない。

と。

「う…ぁぁあぁ…あぐぅうぅ…」

今度ははっきりと。

苦悶の声が私の耳に届いた。

近くにいる…!


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