時 空 堂

「礼は言うな。俺は良いことなど一つもしていない。自分の欲のためだけだ」

「そっか。うん。・・・ねぇ、クロ。最後に一つだけいい?」

 握っていた刹那の手を片方だけ離した。

「なんだ?」

「今までも、こうやって刹那の中に魂を入れていたんだろう?その度に俺のように関係のあった者が来ていたんだろう?」

「あぁ。来た」

「皆救われた?」

 クロは少し間をあけた。

「・・・あぁ。皆おまえのように、刹那の中身を連れていったよ」

 そう言って微笑んだ。

「俺は安易に渡すことはしなかった。その者の想いを見たかったのだ。どれほど中身の者のことを想い、辛い思いをしているか、それが見たかったからな」

「あはは、クロはひどいな」

「ひどくないだろう?そこで気付かなかったら、その者の気持ちはその程度だったってことだろうからな」
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