時 空 堂

┣前進


 携帯をポケットに戻し、駅前へと急いだ。恭華が事故にあったのは駅前近く。何としてでもそれまでに恭華を見つけないと。

 人ごみをすり抜け、上がる息を抑えながら、駅前へと向かった。

 こんなに必死に走るのなんていつぶりなんだろう。誰かのために走るなんて、思ってもみなかった。

 この時を生きていた俺と、一度恭華を失った今の俺とでは、恭華への思いが違う。

 時空堂に出会わなければ・・・、クロや刹那に出会わなければ、今のこの俺は居ない。堕落的に親に頼り、恭華を忘れることが出来ず、気持ちの整理すら出来ないまま、ただただ生きるだけの生活をしていただろう。

 結局恭華を求め、ここに戻ってきた。

 でも、クロが自身の話をしてくれたなかったら、刹那が時空堂を利用した人たちの姿を見せてくれなかったら、俺はここに来なかった。

  
 
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