Time Trip Love
prologue


今更だけどなんで
あんなことを言い出したのか、
自分でも分からない。

後ろに
差し出している右手を、
湿気の混じった南風が
撫でていく。

顔は今も俯いたままだ。

熱でもあるのかと
思うくらい顔が熱い。

なんでこんなことに
なったのかというと、
玲の一言だった。

「昔なんか、
手繋いだりしたよね。」

きっとそうだ。

熱が出ていて、
意識が朦朧としていて
おまけに頭が
イカれていなければ
こんなこと僕が
言えるはずない。

よく考えたら僕は
朝から体がだるくて
仕方がなかったんだ。

夏風邪でも
ひいているんだろう。

だから言えたんだ。

”久しぶりにさ、繋いでみる?”




< 1 / 49 >

この作品をシェア

pagetop