電波ヒーロー
向かうために伶さんの横を通りすぎようとした、瞬間だった。
とん、と壁に手をついて、私が横を通れないようにしてきた。
びっくりして思わず顔を上げると、悲しそうな顔をした伶さんが私を見ていて、伶さんとの近さに、伶さんの表情に、どきっとした。
思わず視線が宙を泳ぐ。
「こんばんは?」
「…こ、こんばんは」
「今帰ってきたんだ?」
「そう、です。…あの、通し「ねぇ、」
私の言葉をさえぎって、伶さんは続けた。
その声は、悲しみと怒りを帯びていた。