Bitter&Sweet



「あの子…まだ記憶……」



「確かに姫は家族に関してだけ、すっぽり忘れてしまってるけど、他の事は思い出してます

何より、姫がナースに戻りたがってますから……」



「ね、翠。やっぱり南をこっちに戻す気ないの?

いまさら、二人で暮らしてたって、翠がつらいだけ……」



「お母さん。オレは幸せだよ?
姫がそばにいれば、それだけで」



「……そんな事を言っても
いつかは南だって他にイイ人連れて来るのよ?

あなたが兄である限り

翠は…堪えられるの?」



さすがは お母さん


ちゃんと1番痛いところを攻撃してくれるなぁ



「……忙しいから………
もう切ります。すみません」



ピッと通話終了



エアコンから車内に暖かい空気が流れこみ



一瞬、夜の闇が濃くなった気がした



オレが兄である限り


姫がいつか誰かを連れて来る



堪えられるかって?



「んな事、オレが知るか」



ハンドルを握りギアを入れて車を走らせた



愛しい姫が待つ部屋へと




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