Bitter&Sweet



妖しく光る彼女の目を見つめ



「……どこかで お会いした事ありましたか?」



さっぱり思い出せない



そんなオレから目を逸らし



ペットボトルを開け水を飲んだ



濡れた口元を手の甲でグイッと拭いながら



「覚えていないのも当然ですね
あの時の鈴木先輩は尋常ではなかった」



見ず知らずの女性に『尋常ではなかった』なんて言われて



オレも少しカチンときた



「………オレとは、どこで?
先輩って事は学校か何か……」



「T大で」



……………大学?
それじゃ、まさか



       ドクン



口元を手で覆い動揺したオレを嘲笑いながら



「覚えていないでしょう?
鈴木先輩
当時、抱いた女の顔も名前も――――――――――――」







真っ黒な水の底に沈めた過去が
上がってきた







「私、ずっとこの病院の薬剤部にいたんですよ?
あなたがアメリカからこの病院に来る前から ずっと」




彼女は ゆっくり立ち上がり


オレの肩に手を乗せ


背伸びをし


オレの耳に唇を付けて



「今度は覚えてくださいね?

吉田 静香(ヨシダシズカ)

あなたの4つ下の後輩です」



フッと軽く息を吹きかけてから
エレベーターのボタンを押し


吉田 静香は去って行った



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