Bitter&Sweet
「いくら院長のお嬢さんでも
そんな風に言われると困りますね」
ちょっと軽蔑するような視線を送ると
「私は言ったはずです。
翠さんにお付き合いしてる方がいらしても構いません
それは結婚後も同じです」
「はぁ?」
「外に女性をいくら作っても構わないと言ってるんです」
美紅さんの意図が読めなくて
困惑すると
「私の母は愛人でした」
美紅さんはカクテルを飲みながら、話し出した
「父は正妻さんよりも母を愛してました。
だけど母の実家は母子家庭で小さなスナックをやってまして
父とは身分が違うって結婚出来なかったんです
身分が違うって今時おかしいと思うけど実際そうだったんです」
悔しそうに唇を噛みしめて美紅さんは
「母はホステスをしながら、私を育て、たまに来る父を待ち…
そんな人生で去年病気で亡くなりました」
キッとカウンターの向こうの窓に広がる夜空をにらみ
「父は奥様に邪魔されて母の葬儀に来られなくて
母の旅立ちはそれは寂しいモノで」
オレは話を聞いて だんだん違和感を覚えていた
そんな環境にいたならば幸せな家庭を夢見るのでは?
なんで始めから愛人を容認するような事をオレに言ったのだろう?