吸血鬼と紅き石
――ギィ。

とその時。

急に何かが軋むような音がして、リイエンの肩が跳ねる。

「な、に…?」

ガタ、と音を立てて椅子を立ちながらリイエンは周囲を見回す。

(レンバルトが、帰って来た?)

だが直ぐに違うと分かる。

彼は何時だってこんな音を立てたりはしない。

吸血鬼の力なのか、彼は移動する時は空間を転移するのだ。

自分も一度経験した事のあるあの力は、こんな音は立てない。

(…まさか、他の吸血鬼が…?)

ドクドクと心臓が高鳴る。

血液が逆流するような、纏めて床へと引き寄せられて行くような、不思議な感覚。

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