吸血鬼と紅き石
(傍にいたいと思う、のに)

彼と、話すのが怖い。

矛盾している己の気持ちにハァ、とリイエンは溜め息を吐く。

「本当に…どうしたら良いんだろう…」

悩みを口に出して、溜め息をもう一つ。

と。

ガタゴト、とコンロの鍋が音を立てた事でようやくリイエンは我に返る。

「…良かった」

危うく吹き零れる所だった鍋を火から下ろして、リイエンは今度は安堵の息を吐く。

ふと周りを見回せば剥かれたまま切られていない野菜や、洗われたまま置きっぱなしの鍋。

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