どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「私を救ってくれたのは、このさとるなんですよ。私が何もできなくて笑うこともできなかった時に、病院で言ってくれたんです。俺が仕事を見つけるのと、親父が退院するのとどっちが早いか競争だ・・ってね。あの時は、涙が止まらなかったね。」
「そんな話すんなよ、恥ずかしいだろ・・。」
さとるは、照れながら髪の毛をぐしゃぐしゃにした。
「さとるは、当時とても荒れていてね。暴走族に入っていたんだ。でも、私の退院より早く仕事を見つけてきたよ。そして、暴走族もやめたんだ。自慢の息子だね・・。」
「あ~!もういいって。親父。俺なんか苦労ばっかかけてきた馬鹿息子だよ。親父の病気がなかったら今でも働いていなかったかもしれない。俺の方こそ、親父のおかげだよ・・。」
感動のドラマを見ているような気分になってきた。
「みなさんも、自分の人生を大事にしてください。仕事のせいで、人生の楽しみを奪われるなんてもったいない。私の場合は、過度のストレスと不眠が原因だと思うが、会議中に突然めまいと息苦しさに襲われて、そのまま病院へ運ばれたんだ。」
「あ、俺とおんなじ・・」
水野さんは、ボソっとつぶやくように言った。