どくんどくん2 ~あの空の向こう~


涙が枯れるくらいに、僕は泣いた。


泣いても泣いても、ゆうじが帰ってくることはない。



最後に見せたゆうじの笑顔が、僕の頭から離れなかった。

最後に触れた頬のぬくもりが、今も僕の手には残っている。


大野君が言った。

「ゆうじに会いたくなったら、ゆうじの歌を聴けばいい」


お葬式で、『Spring Snow』の曲をかけて欲しいと僕がお願いした。

僕はゆうじが死んでしまったことをまだ信じられずにいた。




だって、歌ってるじゃないか。

こんなにも澄んだ声で、ゆうじは歌っている。

すぐそばで歌っている。




死んでなんかない。



ゆうじは…


ちょっと行って来るってライブでみんなに言ったんだ。






ちょっと、



旅に出ただけ…







ゆうじが



死ぬなんて






そんなわけない。




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