続・幸せの契約
お風呂から上がって
自室に戻る


食堂に行った方がいいのかな?


なんて考えながらウロウロしてると


コンコン

ノックが響いた

「はい?」


「失礼します。
お食事をお持ちしました。」


入ってきたのは大和さん…

でも



食事の乗ったワゴンを押している姿は…


「犬居さん!?」



燕尾服は着てなかったけど

食器をテーブルに並べて用意する姿は

紛れもなく犬居さんだった


「時間も遅いので、消化の良いものをご用意いたしました。」


生クリームがたっぷりかかったリゾットが美味しそうに香り立つ


「もしかして
大和さんが作ったんですか!?」



「はい。
この屋敷に来てからも
鈴さんのお食事は、できる限り、全て私が作っていますから。」



「えぇ?!」



知らなかった…
全然気づかなかった


大和さんが
いつも食事を作ってくれてたなんて


「食後には、蜂蜜で甘味を付けたホットミルクをお入れしましょう。

温まって、よく眠れますよ。」




にこやかに微笑んで
私の横に座った大和さん



「毎日忙しいのに、食事を作ってくれてたんですね。
私…何も知らなかったとは言え、大和さんに酷いこと言ってしまって…

ごめんなさい。」



誰よりも忙しくて
誰よりも権力のある人が


毎日毎日
私のために料理してくれてたなんて



大和さんの右手が
私の左頬に触れた


「ごめんなさい。よりも、ありがとう。が聞きたいな?」


敬語も何もない

きっと
これが本当の彼



私は大和さんの手に自分の手を重ねた


「…ありがとう。大和さん。」



その瞬間
微笑む私の唇に一瞬だけ大和さんの唇が重なった


!!



キ…ス?!


固まる私に大和さんは得意気に微笑む


「どういたしまして。

さあ、冷める前に食べてください。」







私はドキドキしたまま


大和さんはニコニコしたまま



夜は更けていった
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