年上カノジョに蜜な罠
教室へ向かって廊下を歩いている時。
「きゃああっ」
「来たぁ!」
飛び交う女子たちの悲鳴。
「はぁぁ…」
隣でため息をつくヨウの顔が苦痛そうに歪む。
周りの女子たちの視線は全てヨウに注がれていると思っていた。
…でも、なんとなく背中に感じる視線。
気になって後ろを振り向くと。
うるさい程の黄色い声の中蚊の鳴くような小さい声。
「…く、センパイ」
ソプラノのような柔らかくか細い声。
"凜久センパイ"
気のせいだろうか?
僕の名前を呼ぶ、女の子の声。
その声はあっという間に周りの声にかき消されてしまった。
「どうした?行くぞ」
そう呼ばれてハッとする。
その声の主が分からないまま、僕たちはその場を後にした。