先生とあたし(仮)

「おいっ、忘れたのか?
俺と約束してただろ!」

頭の上に重みを感じて天井を仰ぐと、あたしの頭に手のひらを乗せた景斗がこっちを見つめていた。



約束…?


「え…約束なんてしてな「この間うちのお袋の伝言伝えただろ?」

次の休みに俺ん家に来いって、と続けてあたしに向かって目線でテレパシーを送ってきた。



とは言ってもそれがテレパシーだったのかは定かではないけど。



とにかく約束があったにしろなかったにしろ、今のあたしには好都合なのは間違いない。



「あ、そうそう!思い出したー。
おばさん直伝のロールキャベツ教えてもらうんだった」


景斗から目線を外すと、あははと笑って百合たちを見回した。


瀬南と有美は目の前にいきなり現れたイケメン景斗に、


「そっ、それならしょうがないね!!」

「…うんっ、楽しんできてねー」


なんて動揺しながらも小声でキャーキャー言っている。



「ふーん、まあいいけど」


って言いながらニッコリ笑った百合は勘が鋭いし、たぶんこれが嘘だってこと気付いていると思う。



「じゃ、そういうことで」


頭の上の重みがなくなって振り返ると、景斗が手をヒラヒラさせながら教室を出て行くところだった。

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